2018年02月03日

ヤマブドウ再考(最高!!)ー 後編

 前編のあと、大分時間が空いてしまいました(その間にポルトガル・スペイン旅行記が入ってしまいました)が、やっとヤマブドウの素晴らしさについて書くことができます。

 もちろん私のようなブドウの栽培についても、ワインの醸造についても門外漢の素人にヤマブドウについて語る資格などある訳はありませんが、ともかく毎年園内で、あるいは北見近隣の山で採れるヤマブドウの魅力になぜかどんどん引き込まれて行くような気がします。木の勢い、果汁の色、濃さ、酸っぱさ、渋味、コク、どれをとっても私を魅了して止みません。そして僅かな文献によってではありますが知れば知るほど、その可能性は限りなく広がって行くように思えます。

 いま私の手許に2冊の本があります。どちらも発行元は社団法人農山漁村文化協会(農文協)です。
@農文協特産シリーズ ヤマブドウ 人工栽培の試み 沢登春雄 著
A新特産シリーズ ヤマブドウ 安定栽培の新技術と加工・売り方 永田勝也 著

向かって左が@、右がA
180212ヤマブドウ本 001.JPG

 これら2冊の本からの受け売りと、私の10年に満たない経験に過ぎませんが、それでも世の中の一般の方に少しでもヤマブドウの素晴らしさを知っていただければとの思いからこの記事を書いています。

 先ずは魅力の源であるヤマブドウ、特に日本の風土に育ったヤマブドウの特徴から。
@多雨・多湿に強く、病害虫にも極めて強い。そして風にも強い。
 日本のような雨が多く、湿度が高い気候ではヨーロッパ系のブドウを栽培するには農薬散布が10回以上、多い品種では20から30回必要というほどヨーロッパ系の栽培種ブドウは病害虫には弱い。
 ところがヤマブドウは原生種のため雨に強く、病害虫の心配もないので農薬を使用する必要がない。
 また、栽培ブドウは風によって脱粒、脱房したり雨によって裂果するが、ヤマブドウはしっかり枝に着いていて皮も厚いため落下したり裂果することが殆どない。
A梅雨を避ける開花期と台風を避ける熟期。
 ヤマブドウは栽培ブドウに比べて花の咲く時期が早い。デラウエアや巨峰は5月末から6月初めに開花するので丁度梅雨にぶつかり花落ちが多発する。ところがヤマブドウは例えば関東では5月中旬から咲き始め5月中には咲いてしまうので梅雨を回避することができる。
 さらに日本の栽培ブドウは秋に熟するものが多く台風の被害を受けやすい。ところがヤマブドウは開花が早いにもかかわらず、台風が通り過ぎる10月から11月にならないと熟さない。
 最近は台風が北海道にも上陸することがあるが、ヤマブドウの熟するのは北海道では9月末から10月である。
Bヤマブドウにはオスの木とメスの木がある。
 野生種のブドウは元来、雌雄異株であり、ヤマブドウもその例にもれない。栽培種がほとんど両性花なのに対して、ヤマブドウはオスの木の花がメスの木に花粉を供給することで、メスの木に着果する。
 ヤマブドウの自生地では圧倒的にオスの木がメスの木に比べて多い。メスの木は人間や動物(特に熊)によって痛められ、オスの木はブドウが生らないので株の健全さが保たれるからと推定されている。
C房と果粒が小さく、果粒の着き方がまばら。
 栽培ブドウは一房の平均が200〜300g、なかには1Kgのものもあるが、ヤマブドウは100g前後の房が多い。
 しかし、近年系統の選抜が急速に進んで一房200g以上、ときには300gにもなる系統が発見されている。果粒の大きさも生食用のデラウエアより大きく、ベリーAと見まごうほどのものも出てきている。
 我がぼたん園のヤマブドウも、出来のよい年の条件のよいものは150g〜200g、果粒の大きさもデラウエア程度はある。
D高い酸度(酸っぱさ)に持ち味がある。
 ヤマブドウの酸度は、栽培ブドウの0.5%%に対して1.5〜2.0%と3倍以上の高さである。このことはワインの原料としては重要なポイントとなる。
 ブドウの糖度は果実が成熟するにつれ高くなり、完熟時に最大となる。一般には早めに収穫されるため、普通糖度は14〜16%前後だが、樹上で完熟したものは20%以上になる。
Eそのほかにもヤマブドウについては、生育が早く栽培ブドウの2倍以上の速さで成長する。ぼたん園内の自生ヤマブドウを見ていても高さが20mもあろうかという針葉樹(ドイツトーヒ、エゾマツ、トドマツ)に巻きついてそのてっぺんまで2,3年でツルを伸ばす。そして、枝が木を這い上がっているあいだは実は着かず、枝が木のてっぺんまで届いて下に向かって垂れるようになると垂れた枝に実が生るようになる。
 また、ヤマブドウの蔓は非常に弾力性があってかつ丈夫なので雪害、雹害、凍害にも強く、栽培ブドウが枝折れしたり、裂けたり、傷ついたところから病原菌が侵入して枯れ死するような被害を受けるような場合でも
殆ど被害がない。(ぼたん園では女性たちが昔からヤマブドウの蔓で籠や装飾品を作っている)

8月のヤマブドウ
170821平成29年8月21日までのカメラ画像 014.JPG

収穫前のヤマブドウ
161017 086.JPG

 以上がブドウとしてのヤマブドウの特徴ですが、ここからはワインとしてのヤマブドウワインの特長について述べたいと思います。

Eヤマブドウワインは濃厚でコクとうまみがある。
 ヤマブドウをワインにしたときは、ヨーロッパ種を基本にしたいまのワイン用栽培ブドウのさっぱりした味に比べると、はるかに濃厚であり、コクとうまみがある。
 現に毎年作成するぼたん園のワインと市販のワインを飲み比べてみると、ワイングラスに注いですぐ分かるのはその色の濃さと、香りの違いである。さらに飲んでみて分かることは、市販のワインが水のように薄く感じられることである。
Fヤマブドウから健康飲料としてのワインができる。
 ヤマブドウは昔から健康保健飲料として利用されていた。
 東北地方の山間部ではヤマブドウを瓶に入れて醸し、病人や妊婦に滋養薬として飲ませていた。1990年代に入ってから日本でもワインの効用が言われ出したが、特にヤマブドウが身体にいいことは化学的な知見が出るずっと以前から知られていた。
G日本のヤマブドウはひときわ濃い色素、多いポリフェノールを持っている。
 日本のヤマブドウは欧州種のブドウと比べて色素が濃厚で、酸度が高く、渋味(タンニン)も強い。ポリフェノールや有機酸などの果汁成分も多い。近年、認知症の治療薬として、また癌の発生、転移、増殖を抑える働きがあるとして注目を集めているポリフェノールにリスベラトールがあるが、ヤマブドウにはシャルドネの34倍の含有量があることが認められている。
H無添加、無農薬のおいしいワインやジュースが作れる。
 ふつうワインには酸化防止剤(亜硫酸塩または亜硫酸カリウム)を添加して褐変を防いでいる。それでも保存が悪いと劣化して褐変してしまうことがある。ところが、ヤマブドウのワインは無添加でもほとんど色が変わらない。
 さらには、ヤマブドウのワインは常温保存が可能である。というより、ある程度の高温により熟成することで野生種としてのとげとげしさがとれて、まろやかさが感じられるようになる。
 このヤマブドウのワインの「色が濃い」「変色しない」「常温保存に耐える」という特性は、Dで挙げた
ヤマブドウの特性とも相俟って、大いなる可能性を感じるところである。
 さらに、欧州種のワインにない香気とコクもヤマブドウワインの持ち味であり、加工の楽しみという意味でもヤマブドウはあらためて見直してみる価値がある。
Iヤマブドウは、品種改良のために栽培ブドウとの交配にも活用できる。
 ヤマブドウは果実が小さく、その割には種が大きく、酸っぱくて果皮が硬いため食用には向かない。
 その反面、「耐寒性に優れていている」「酸性土壌にも強い」「病害虫に強い」「風や雨(台風にも)強い」などの特性を備えている。
 日本でいま栽培されているブドウはヨーロッパ種が主流であり、北海道では冬期はふつうの栽培ブドウは土に埋めて越冬しなければならないが、ヤマブドウは零下30℃以下でも自生している。また、ヨーロッパ種は原産地が西アジアの乾燥地帯であるため、雨に弱く、酸性土壌にも弱い。
 また、毎年台風が来るたびにヨーロッパ種のブドウは枝から落ちて被害をうけるが、ヤマブドウは殆ど枝から落ちることはなく被害を受けることが殆どない。
 そのため日本に自生しているヤマブドウとの交配により、日本の気候や土地に合ったブドウを作り出そうとして努力している。典型的な例が北海道池田町の十勝ワインである。(十勝ワインについては平成27年10月17日の記事「山ブドウとワイン」を参照ください。)

ヤマブドウの仕込み
暴風低気圧来襲 008.JPG

posted by ぼたん園々主 at 21:32| Comment(0) | 日記