2020年12月26日

独居老人の独り言 岡本先生の著書について

  今日は令和2年12月26日(土)である。現在の時刻は22時22分。今日は快晴で、現在の外気温は5℃、明朝は2℃まで下がる予報だ。

  昨日まで、第2信として愛し野内科クリニックの岡本卓先生との出会い、そして先生の指導によって自分自身が九死に一生を得た経験を書いた。
  ここでは、岡本先生と出会う最初のきっかけとなった先生の著書2冊、「インスリ注射も食事制限もいらない糖尿病最新療法」(角川SSC新書)と「薬が減らせて血糖値にもしばられない糖尿病最新治療法2」(角川SSC新書)について紹介したい。

  現在、武漢ウイルス(新型コロナウイルス)の感染者は世界全体では7940万人、死者数は174万人になっている(12月25日現在)。日本の感染者数は21万人、死者は3200人である(同日現在)。
  これに対して日本の糖尿病患者数は糖尿病の可能性のある人を含めると、なんと2210万人といわれている。これはもう完全にパンデミックと呼んでもおかしくない状況である。

  岡本先生がこの2冊の本で警鐘を鳴らしているのは、次のようなことについてである。

1.血糖値はとにかく厳しく下げればよいのか?
  現在の日本の糖尿病治療が厳格な血糖値コントロールを要求するものが主流であり、血糖値は低ければ低いほどよいといわれている。ところが世界の流れはすでに、血糖値は緩やかにコントロールする方向に変わってきているというのである。日本では依然として厳しい食事制限(カロリー制限)やインスリンを中心とする薬物治療が主流となっている。現在日本で常識とされている糖尿病治療がいかに時代遅れになっているのか警鐘を鳴らしているのである。

  それは、以下のようなエビデンスに基づいている。
  2008年2月6日、アメリカで「アコード試験」と呼ばれる糖尿病治療研究の成果が報告された。この検査はそもそも、糖尿病患者の血糖値を厳格に正常化しようとしたほうが、そうでない場合に比べて生存率がよくなることを証明するために2001年にスタートした試験であった。

  試験の対象はアメリカとカナダの糖尿病の患者1万人以上で、ヘモグロビンA1c(注)を6.0%未満に厳格にコントロールして血糖値を正常化させるグループと、ヘモグロビンA1cを7.0%から7.9%の比較的緩やかにコントロールするグループとに分け、追跡して比較した。

  結果は、まったく予想外なものとなった。血糖値を厳格にコントロールしたグループのほうが、死亡率が22%も死亡率が高かったのである。
 *(注)ヘモグロビンA1c:赤血球中のヘモグロビンにぶどう糖が付着した度合いを示す数値で、過去1
〜2か月間の血糖値が反映されている。

  そもそも日本での血糖値コントロールの評価は、ヘモグロビンA1c5.8%未満が「優」、6.5%未満が「良」、とされ、とりあえずは6.5%未満を目指すことになっている。これは1995年に発表された「クマモト・スタディ」という研究のデータがもとになっている。これは日本人の糖尿病患者110人を対象に、6年間治療と追跡調査をしたもので、強化療法といって1日に3,4回インスリン注射をしてできるだけ血糖値を正常化しようとしたグループと、従来のインスリン注射をしたグループとを比較したものだという。
  その結果、糖尿病網膜症と糖尿病腎症について強化インスリン療法を行ったグループによい成績が出たというもので、その数値がヘモグロビンA1c6.5%であったということが根拠となっている。

  これについて、岡本先生は@インスリン治療では必ず低血糖が起こるが、患者たちに重症の低血糖がほとんど起きていないこと、Aインスリン強化療法では必ず見られるはずの体重増加がほとんど起きていないこと、B研究に参加したのが熊本大学と二つの関連病院だけで対象110人という限られた人数であり、追跡期間も短いこと、などの疑問を呈している。

  以上のような日本の血糖値コントロールの評価に対して、欧米で採用されている血糖値コントロールの目安はヘモグロビンA1c7.0%が採用されている。これは1998年に発表された「UKPDS」と呼ばれる、イギリスの糖尿病合併症予防に関する研究で、3867人の糖尿病患者の治療と10年間の追跡調査の結果に基づくものである。

  この研究では、血糖値と血圧を下げると合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を糖尿病の三大合併症という)が減るという結果がでたが、そのとき合併症のリスクが減少するのがヘモグロビンA1c7.0%だったので、以降欧米では血糖値コントロールの目安としてヘモグロビンA1c7.0%が採用されることになったのである。

2.糖尿病治療で本当に大切なことは何か?
  糖尿病の治療では先ずは生活習慣の改善による血糖値のコントロールが求められる。日本ではその目標としてヘモグロビンA1c6.5%という厳しい数値が与えられることになる。
  それは糖尿病でなにより恐ろしいのは、細い血管や神経が傷つくことにより起こる糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経症の三大合併症だとされているからである。
  しかし、岡本先生は糖尿病の合併症は細い血管や神経にだけ起こるのではなく、それよりも太い血管に動脈硬化がが起きることによる脳梗塞、狭心症や心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症という大血管病の方が重大な問題だとする。

  細い血管(毛細血管など)の問題である三大合併症は糖尿病発症後、治療をしないままで5〜10年くらい経ってから現れるのに対し、大血管の問題である動脈硬化は境界型の人であっても既に危険な状態になっている場合がある。やっかいなのは、本人に自覚症状が無いことが多い。(現に自分の場合がそうであった)

  三大合併症は糖尿病に特有で、確かに困った問題ではある。しかし、このことばかりが声高に言い立てられ、太い血管で進行している動脈硬化や、重大な大血管病が案外知られていないのは重大な問題であり、動脈硬化によって太い血管が詰まって起こる脳梗塞や心筋梗塞は突然死に繋がる場合があるので、そうした生死にかかわる病気を防ぐことこそ糖尿病治療の目的とすべきだ、と岡本先生は警告する。

  実際に糖尿病患者の死因の26.8%が「心血管疾患」となっている。(「アンケート調査による日本人糖尿病患者の死因ー1991〜2000年の10年間、1万8385人での検討」『糖尿病』50巻、2007年)
  それ故に、岡本先生は糖尿病患者の治療では動脈硬化を食い止め、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞を防ぐことを第一の課題としている。

  そのためには、血糖値だけでなく、コレステロール、血圧を一緒に管理し、悪玉コレステロールは薬で抑え、血圧は減塩食と運動でコントロールするよう勧めるという。もう一つは、糖尿病の患者には先ずは心臓への注意を欠かさないという。そのためには、24時間心電図を積極的に活用することが有効であり、また循環器の医師との連携こそが重要であるとしている。

3.糖尿病治療の落とし穴、低血糖とは?
  低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度が低くなり過ぎた状態をいう。血糖値がどのくらいだと低血糖と言うかの厳密な定義はないが、血糖値が50〜60r/dlくらいになるとさまざまな症状が出て、重症になると死に至ることもある。低血糖になると、体がぶるぶる震えたり、汗が噴き出たり、心臓がどきどきしたりするような分かり易い症状ばかりではなく、胸が痛んだり、気持ちが落ち込むなどの低血糖とは無関係に思えるような症状も出るという。

  糖尿病でインスリン注射をしている場合だけではなく、飲み薬であっても低血糖になる可能性がある。血糖値を厳格にコントロールしようとすると、どうしてもインスリン注射や強い飲み薬を使用することになるが、それらによって起きる低血糖状態は胸痛や、うつや、落ち込み、疲れなどの症状も問題だが、夜間、睡眠中に起きる本人が気づかない低血糖が日中よりも何倍も多いことが分かってきた。(イギリスのマックナリー博士らの2007年の研究報告。インスリン注射による治療をしている患者160人に連続糖測定装置を装着して24時間モニターした結果、日中よりも夜間起きる本人が気づかない低血糖が特定の時間帯では100倍も多いことが判明した)

  岡本先生は、「インスリン注射も食事制限もいらない 糖尿病最新療法」の最後のほうで次のように述べている。
  「なぜ私がこれほど心臓の検査に力を入れるのかといえば、糖尿病を診る立場からは、心筋梗塞の予防が最も重要だと考えているからです。そして、糖尿病を診ている医師が、いかに症状のないうちに、患者さんを循環器の医師に連携していくかが大事だと思うのです。中略
  アコード試験が示した血糖値正常化をめざす厳格な血糖値コントロールが血中のインスリン濃度を高め、それが心筋梗塞に影響するであろうこと。これまで糖尿病治療は血糖値コントロールに重きが置かれ、血糖値を正常化すれば死亡率も下がるという思い込みで進められてきました。しかし、事実はそうではなかったのです。
  もちろん、血糖値が正常であることはいいことには違いありません。しかし、血糖値を無理やり下げる、それも心筋梗塞のリスクのある高血圧その他の合併症を持った人の血糖値を無理やり下げることは、死亡率を高めてしまうのです。このことは、糖尿病治療の到達点をどこに置くかという問題への視点を提供してくれます。糖尿病治療の効果を測るときには、血糖値を見るのではなく、その最終的な到達点である心筋梗塞を予防したのかどうかをこそ、見るべきでしょう。」
 
  
posted by ひろちゃん at 23:53| Comment(0) | 日記

2020年12月02日

独居老人の独り言 愛し野内科クリニック岡本先生との出会い

  今、ここに一通の紹介状がある。あて先は、北見市の北星脳神経・心血管内科病院 循環器科 福原源太郎先生御机下、そして差出人は、同じく北見市の愛し野内科クリニックとなっている。
  発信日付は2011年(平成23年)8月30日、となっているから、今から9年前である。この封書は封のところに「岡本」の朱印で割り印がされているので、本来は直接あて先の北星脳神経・心血管内科病院の福原源太郎先生に手渡されるべき封書であったはずである。今手許にあるということは当然のことながらあて先には届いていないということである。

  僕が東京都府中市の榊原記念病院で心臓の冠動脈のステント手術を受けたのが2014年(平成26年)の8月21日だから、先の紹介状の発信日から既にほぼ3年が経っている。この間、毎年愛し野クリニックの岡本先生から毎年紹介状を書いていただいているので、通算すると4通もの紹介状を書いていただいたことになる。今から考えると、その間に全く自覚症状がなかったとはいえ、我ながらあきれてしまう。

  この年(2014年)の確か7月初めだったと思うが、岡本先生から4通目の紹介状を渡されて、さすがに申し訳ないと思ったので、渋々ながら北星脳神経・心血管内科を訪ね、持参した紹介状を提出し検査を受けた。
  担当医の福原源太郎先生の最初の一言は、今でも憶えているが「河西さん、詰まっていますよ!天皇陛下と同じです!」であった。目の前のコンピューターには心臓らしきものと、それから伸びている太い血管らしきものの画像が映し出されている。2本の太い動脈が左右から心臓を包み込むように延びている。心臓の筋肉に栄養を送る「冠動脈」といわれる動脈だ。画像には左冠動脈が映し出されていて、心臓の鼓動に合わせて波打つように動いている。それは造影剤が黒く流れていることでそれと分かるのだが、途中から3本に枝分かれしていて、そのうちの2本が明らかに途中から先が白くなっていて流れていないことが分かる。血流が止まっているところから先の心臓の筋肉は壊死して、いづれ心臓は鼓動を停止する。「心筋梗塞」である。「97%詰まっています。すぐにでも手術が必要です。手術は北見ではできないので、札幌で受けることになりますが、どうしますか?」

  晴天の霹靂である。いままでも、今現在も全く自分には自覚症状が無い。胸が痛むこともないし、めまいもしたことが無い。全く心当たりが無いのである。8月か9月には自転車でスペインのサンチャゴ巡礼を敢行する計画である。「手術は旅行から帰ってからでは駄目ですか?」と僕。「とんでもない。東京で手術を受けるのなら、すぐに奥さんに迎えに来てもらいなさい。」と先生。「え?」。「飛行機はエコノミー症候群の恐れがあります。」

  それから急いで川崎の自宅に戻って(飛行機は何とか一人で搭乗した)、7月9日には救急扱いで府中の榊原記念病院の初診を受け、各種検査ののち前述したように8月21日には桃原哲也先生により手術を受けた。その後は2018年4月と翌年の2019年1月と4月に経過診療を受けたが、特に支障は無かった。
  その間は川崎にいるときは自宅近くの新ゆり内科橋央医師、北見にいるときは愛し野内科クリニックの岡本卓医師をかかりつけ医として毎月1回は検診を受けている。今のところは、お二人の医師の指導に従い検査数値に特に異常は無く、生活にも何ら支障はない。有難いことである。

  それにつけても、もし偶然にも岡本先生に出会っていなければ今頃はとっくにあの世に行っていたはずである。岡本先生のことを初めて知ったのは、全くの偶然である。2015年9月10日付の記事「命の恩人」にも書いたとおり、今から15年近く前、平成17年に叔母が亡くなった前後であったと思うが、いつも会社の帰り(その頃はまだ会社勤務で東京まで通勤していた)に立ち寄る本屋で先生の著書、「インスリンも注射も食事制限もいらない糖尿病最新療法」が目に留まったからである。

  題名が気になったことと、本を開いてみてその著者略歴の最後に、「2009年2月より北海道北見市で愛し野内科クリニックを開業」と書かれていたからで、早速買い求めて帰宅し読んだ。
  その内容は、それまで10年近く会社の健康診断や近所のかかりつけ医、そして2002年(平成14年)の5月に世田谷の関東中央病院での2週間の教育入院(糖尿病の初期の患者に糖尿病とは何か、悪化を防ぐための生活指導などを行う入院)などで受けてきた指導とは大分異なるものだった。

  翌年の春、僕は北見へ行ってすぐに岡本先生を訪ねた。愛し野内科クリニックはぼたん園からは車で15分くらい、JR石北線の駅で言うと北見駅から網走方面に向かって柏陽駅の次、愛し野駅の駅前、と言っても駅(無人駅)の周りにはクリニックと薬店があるだけで、駅の反対側(北側)は畑である。
  それでも、いつ行ってもクリニックの待合室は満室で、診察を待つ患者は絶えることが無い。2,3時間待ちは当たり前で、朝8時半からの開院の30分以上前から入り口にある専用の箱に診察券を投入して、順番待ちをする患者が多い。

  先生の著書には、『インスリン注射も食事制限もいらない糖尿病最新療法』(角川SSS新書 2009年)の他にも『薬が減らせて血糖値にもしばられない糖尿病最新療法2』(角川SSS新書 2012年)、『薬にも数値にも振り回されない高血圧最新療法』(角川SSS新書 2011年)、『本当は怖い「糖質制限」』(祥伝社新書)、糖尿病とアルツハイマー病を予防する地中海式和食レシピ』(監修 角川SSCムック 2013年)があり、その他にも『愛し野だより』として、最新の医療情報を中心にその時々の話題や「くちびるに歌を」と題したエッセイを自らお書きになっている。今、僕の手許には『愛し野だより』平成21(2009)年2月9日の第1号も、令和2(2020)年8月5日の第550号もあるので、これからも続いて行くのだろう。
  これらの著書や著書以外の本も、『愛し野だより』も待合室に置かれていて、いつでも希望者に貸し出されている。『愛し野だより』は、希望すればコピーをして無料で頂くこともできる。

  『愛し野だより』の第1号で、岡本先生は「院長の挨拶」として、いみじくもこう述べられている。
  「患者様本位の医療提供を目指したい思いでこの度、愛し野クリニックを開業いたしました。昨今の医療は機械文明に振り回されたふしの感じられるところが多いと思います。中略。
  私は患者様との直接的な人間関係重視の医療を大切にしていきます。そして機械文明に振り回されず機械文明を使いこなしていきたいと考えています。患者様にとって心ある医療となるよう最善を尽くしますので、どうぞよろしくお願いします。」

  これだけの患者を毎日こなしながら、本も書き、常に国内外の新しい知見を学習され、患者のため地域医療のために活動を続けておられること、そしてなによりも患者のことを大事に考え、いつも明るく接して居られる姿に頭が下がる思いをしている。

人生において人との出会いほど大切なことは無い。一期一会、どんな人であれ自分の人生にとって掛け替えのない宝となる可能性を持っている。永い人生、いつどこでどんなことが起こるかは誰にも分からない。神様の采配は己一人の小さな目で見ていては到底理解はできない。

  自分の体験を基に、岡本先生の著書を中心に紹介したいと思って書き始めたが、そこまで行かないうちに紙数が増えてしまった。今回はここまでとして、また機会を改めたいと思う。

  続きを読む
posted by ひろちゃん at 23:54| Comment(0) | 日記