今回は、奥秩父の渓谷美で知られた西沢渓谷を訪ねた。歩行時間が4時間以上なので、いつもより30分早く7時半にIさん宅(日野市豊田)に向かう。今日はやっと使い慣れてきたVWヴァリアントのカーナビの指示に従うこととする。
いつもは若葉台から京王線の桜上水を抜けてゆくけれど、今日は世田谷街道で鶴川を経由して多摩ニュータウンを抜ける道をたどる。ところが、世田谷街道へ出た途端から進むにつれて渋滞。この時間は多摩ニュータウンの通勤車両が多いのだろう。8時半の到着予定が15分ほど遅くなってしまった。
Iさん宅からもナビのお世話になることにして、いつものように八王子インターから中央高速に。渋滞もなく、快調に相模湖町、大月町、そして笹子トンネルを抜け勝沼インターで高速を降りる。Iさん宅を出るときにナビを目的地に設定しているので、その指示に従い迷うことなく快走する。
勝沼はフルーツの町だ。道路の両脇には、ブドウや桃の木が芽吹き始めた果樹畑が続く。やがて国道140号(秩父往還道)に入ると徐々に高度を増し、笛吹川に沿いながら登ってゆく。
若い頃に登った懐かしい乾徳山登山口の案内板を過ぎて少し行くと、やがて石積(ロックフィル)の広瀬ダム、広瀬湖を左に見て先に進むと間もなく西沢渓谷入口の案内板がある。
国道140号は、この先の98年に開通した雁坂トンネルを抜けて秩父に至る。我々は国道を外れてみやげ物店の前から少し下ったところにある村営駐車場(無料)に駐車する。
登山靴に履き替えて売店に戻り、渓谷に向かう舗装された林道の入り口に近づくとゲートが閉まっている。ゲートには一般車乗り入れ禁止の看板と並んで、「渓谷遊歩道は工事中のため、三重の滝から先は通行不可」の注意書きがぶら下がっているではないか!!よく見ると渓谷のおよそ三分の一までしか行かれない。
気を取り直して舗装された林道を20分ほど進むと、左に大きな案内板があり、ここからは林道を外れて山道へ入る。すぐに西沢山荘があるが、今は閉鎖されているようで案内板には旧西沢山荘と書かれている。
<旧西沢山荘>
笛吹川の清流を下に見て、沢音を聞きながらしばらく進むと二俣吊橋が現れる。ここは、これから向かう西沢とは谷筋の違う東沢とが合流するところで、吊橋は東沢からの流れに架けられている。
吊橋はそれほど長くはないが、それでも橋の中央付近は揺れて思わず鉄製のロープを握る手に力が入る。橋の真ん中で記念写真を撮ってもらう。
<二俣吊橋>
<吊橋上の筆者>
吊橋を渡ってからは沢沿いの道を何度か昇り降りするが、最後の崖には立派な鉄製の階段と鎖が整備されていて危険はない。かれこれ40分ほどで最後の階段を登り切って少し下ると、一段と沢音が大きくなって、三重の滝(みえのたき)の上に到着する。ここから先はロープが張られて立ち入り禁止となっている。
残念ながら諦めるしかない。やっぱり事前に現地の状況を確認しておくことが大事と再確認する。しかし、考えようによってはいつもよりゆっくりと自然を楽しむことができると思うと、これも悪くはないと思い直す。当初の予定では帰途、駐車場から近い三富村々営の笛吹の湯で汗を流すつもりだったので、これでいつもよりゆっくり温泉が楽しめると思うと悪い気はしない。
三重の滝は上流から流れてきた水が急に両脇から崖が迫る狭い谷を、大きな石の間を急流となって三段の滝を作って流れ落ちる。先ほどの立ち入り禁止のロープが張られたところから左へ少し降りると、その先に木製の滝全体を下から見られる観覧席が作られている。
時間も十二時半となっていたので、この観覧席に座って今朝、八王子インターに入る手前のコンビニで買ってきた弁当を広げる。マイナスイオンのせいか、いつにも増して空気も弁当もお茶も美味しく感じる。
<三重の滝>
車を止めてある駐車場まで戻り、観光客がいないみやげ物屋で手作りだという草餅を買う。車に戻って登山靴を履き替える。ガイドブックに掲載されていた、ここから10分ほど下ったところにある、三富村々営の「笛吹の湯」に寄る予定だったが、自他ともに認める温泉(特に秘湯)通のIさんの下調べによると、少し手前の「白龍閣」なる温泉旅館の方がよさそうだとの意見に従うことにした。
<白龍閣>
「白龍閣」は外観は普通の温泉旅館だったが、大浴場、露天風呂ともになかなかよい湯であった。国道140号に面していて、反対側は笛吹川に面している。特に露天風呂は鬱蒼とした緑に囲まれて源泉から引いていると思われる45,6℃はあろうかという湯が道路側の崖の上部から流れ落ちてくる。紅葉の木が多く、紅葉の季節に訪れてみたいと思わせる。
笛吹川のこの辺りの流域にはよい源泉が湧き出しているらしく、他にも数軒の温泉施設があるようだ。今上天皇がまだ独身でおられた頃、乾徳山登山の際に宿泊された川浦温泉の山県館はこの少し下ったところにある。
<白雲閣大浴場>
<白雲閣露天風呂>
<新緑の白雲閣露天風呂>
帰途は例によって、ナビに従いIさん宅経由で自宅までストレスなくスムーズであった。今回の山歩きは当初の予定通りにはゆかなかったが、今の季節ならではの新緑の山々とゆったりと源泉かけ流しの湯を満喫できた旅であった。感謝。