あれよあれよという間に3月になってしまった。2月24日にはとうとうロシアがウクライナに全面侵攻した。今日は3月4日。産経新聞ではロシア国防相がロシア将兵498人が戦死、1597人が負傷したと具体的な損害を初めて公表したと報じている。また、同時に同省はウクライナ将兵2870人以上が死亡、572人を捕虜にしたことも明らかにしているという。
マスコミは連日ウクライナの惨状と国際的なロシアに対する非難と制裁について報道している。確かに罪もない一般国民が逃げ惑い、子供や年寄りが泣き叫び、銃を取って、あるいは素手で戦車を止めようと立ち向かう住民、国を守るためにウクライナ国内に残った父親を案じる家族などの映像を見ると、本当に同情を禁じ得ない。つい70数年前に日本で起きていたことを想うととても他人事とは思えない。
戦争がよくないことは普通の人間ならば誰でも分かっている(はずだ)。誰も戦争を起こしたくて戦争を始める人間はいない(と信じたい)。恐らくプーチンだって戦争したくて侵攻を決断したのではないのではないか。日本が真珠湾を攻撃した時のような止むに止まれない事情が全く存在しないとは断言できない。盗人(ではないが、現象面だけを見るとそう見える)にも三分の理、とういう諺もある。一方の言い分だけではなく、双方の言い分を聞くことは必要なことと思うので、大分長くなるが取り上げてみたい。
一部の報道では侵攻直前にプーチンがロシア国民に向けて1時間に亘る演説をしたことが報じられているが、その内容については殆ど断片的なことしか報道されず、専らプーチンの嘘の宣伝と捉えている。
そこで、ネットで調べてみたところNHK NEWS WEBに演説の全文が載っていた。(search.yahoo.co.jp)
【演説全文】ウクライナ侵攻直前プーチン大統領は何を語った? 2022年3月4日18時25分)
プーチン大統領演説 2022年2月24日 抜粋
NTOの”東方拡大”への危機感
この30年間、私たちが粘り強く忍耐強く、ヨーロッパにおける対等かつ不可分の安全保障の原則について、NATO主要諸国と合意を形成しようと試みてきたことは、広く知られている。
私たちからの提案に対して、私たちが常に直面してきたのは、冷笑的な欺瞞と嘘、もしくは圧力や恐喝の試みだった。
その間、NATOは、私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、絶えず拡大している。軍事機構は動いている。繰り返すが、それはロシアの国境のすぐ近くまで迫っている。
西側諸国が打ち立てようとした”秩序”は混乱をもたらしてきた
ソビエト連邦の崩壊後、事実上の世界の再分割が始まり、これまで培われてきた国際法上の規範が、(中略)自らを冷戦の勝者であると宣言した者たちにとって邪魔になるようになってきた。
もちろん、実務において、国際関係において、また、それを規定するルールにおいては、世界情勢やパワーバランスそのものの変化も考慮しなければならなかった。しかしそれは、プロフェッショナルに、よどみなく、忍耐強く、そしてすべての国の国益を考慮し、尊重し、みずからの責任を理解したうえで実行すべきだった。
しかしそうはいかなかった。あったのは絶対的な優位性と現代版専制主義からくる陶酔状態であり、さらに、一般教養のレベルの低さや、自分にとってだけ有益な解決策を準備し、採択し、押し付けてきた者たちの高慢さが背景にあった。
事態は違う方向へと展開し始めた。
例を挙げるのに遠くさかのぼる必要はない。まず、国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを絶え間なく爆撃した。
(中略)
リビアに対して軍事力を不法に使い、リビア問題に関する国連安保理のあらゆる決定を曲解した結果、国家は完全に崩壊し、国際テロリズムの巨大な温床が生まれ、国は人道的大惨事に見舞われ、いまだに止まらない長年にわたる内戦の沼にはまっていった。
リビアだけでなく、この地域全体の数十万人、数百万人の人々が陥った悲劇は、北アフリカや中東からヨーロッパへ難民の大規模流出を引き起こした。
シリアにもまた、同じような運命が用意されていた。シリア政府の同意と国連安保理の承認が無いまま、この国で西側の連合が行った軍事活動は、侵略、介入にほかならない。
(イラク侵攻について)その口実とされたのは、イラクに大量破壊兵器が存在する信頼性の高い情報をアメリカが持っているとされていることだった。
(中略)
後になって、それはすべて、デマであり、はったりであることが判明した。イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。その結果、大きな犠牲、破壊がもたらされ、テロリズムが一気に広がった。世界の多くの地域で、西側が自分の秩序を打ち立てようとしてやってきたところでは、ほとんどどこでも結果として、流血の癒えない傷と、国際テロリズムと過激主義の温床が残された。(以下省略)
アメリカは”うその帝国”
NATOが1インチも東に拡大しないと我が国に約束したこともそうだ。繰り返すが、騙されたのだ。(中略) これだけのいかさま行為は、国際関係の原則に反するだけでなく、なによりもまず、一般的に認められている道徳と倫理の規範に反するものだ。正義と真実はどこにあるのだ?あるのはうそと偽善だけだ。
(中略)
色々あったものの、2021年12月、私たちは、改めてアメリカやその同盟諸国と、ヨーロッパの安全保障の原則とNATO不拡大について合意を成立させようと試みた。すべては無駄だった。アメリカの立場は変わらない。彼らは、ロシアにとって極めて重要なこの問題について私たちと合意する必要があるとは考えていない。自国の目標を追い求め、私たちの国益を無視している。
(中略)
軍事分野に関しては、現代のロシアは、ソビエトが崩壊し、その国力の大半を失った後の今でも、世界で最大の核保有国の1つだ。そしてさらに、最新鋭兵器においても一定の優位性を有している。この点で、我が国への直接攻撃は、どんな侵略者に対しても、壊滅と悲惨な結果をもたらすであろうことに、疑いの余地はない。(以下略)
しかし、私たちの国境に隣接する地域での軍事開発を許すならば、それは何十年もさきまで、もしかしたら永遠に続くことになるかもしれないし、ロシアにとって増大し続ける、絶対に受け入れられない脅威を作り出すことになるだろう。
NATOによるウクライナ領土の軍事開発は受け入れがたい
(中略)
問題なのは、私たちと隣接する土地に、言っておくが、それは私たちの歴史的領土だ、そこに、私たちに敵対的な「反ロシア」が作られようとしていることだ。それは、完全に外からのコントロール下に置かれ、NATO諸国の軍によって強化され、最新の武器が着々と供給されている。アメリカとその同盟諸国にとって、これはいわゆるロシア封じ込め政策であり、明らかな地政学的配当(ママ、?)だ。
一方、我が国にとっては、それは結局のところ生死を分ける問題であり、民族としての歴史的な未来に関わる問題である。誇張している訳ではなく、実際そうなのだ。これは、私たちの国益に対してだけでなく、我が国家の存在、主権そのものに対する現実の脅威だ。それこそ、何度もいってきたレッドラインなのだ。彼らはそれを超えた。
そんな中、ドンバス(ウクライナ東南部地方、ドネツク州、ルハーンシク(露語ではルガンスク)州)の情勢がある。2014年にクーデターを起こした勢力が権力を乗っ取り、お飾りの選挙によってそれ(権力)を維持し、紛争の平和的解決を完全に拒否したのを、私たちは目にした。8年間、終わりの見えない長い8年もの間、私たちは事態が平和的・政治的手段によって解決されるよう、あらゆる手段を尽くしてきた。
が、全ては徒労に帰した。(中略)ロシアしか頼る先がなく、私たちにしか希望を託すことのできない数百万の住民に対するジェノサイド、これを直ちに止める必要があったのだ。まさに、人々のそうした願望、勘定、痛みが、ドンバスの人民共和国を承認する決定を下す主要な動機となった。
さらに強調しておくべきことがある。NATO主要諸国は、自らの目的を達成するために、ウクライナの極右民族主義者やネオナチをあらゆる面で支援している。彼ら(民族主義者ら)はクリミアとセバストポリ(クリミア半島南西部の都市)の住民が、自由な選択としてロシアとの再統合を選んだことを決して許さないだろう。当然、彼らはクリミアに潜り込むだろう。それこそドンバスと同じように。戦争を仕掛け、殺すために。大祖国戦争(第二次大戦)の際、ヒトラーの片棒を担いだウクライナ民族主義一味の虐殺者たちが無防備な人々を殺したのと同じように。
彼ら(民族主義者ら)は公然とロシアの他の数々の領土も狙っていると言っている。全体的な状況の流れや、入ってくる情報の分析の結果が示しているのは、ロシアとこうした勢力との衝突が不可避だということだ。それはもう時間の問題だ。彼らは準備を整え、タイミングをうかがっている。今やさらに、核兵器保有までも求めている。そんなことは絶対に許さない。(中略)
目的はウクライナの”占領”ではなく、ロシアを守るため
現在起きていることは、ウクライナ国家やウクライナ人の利益を侵害したいという思いによるものではない。それは、ウクライナ人を人質にとり、我が国とわが国民に対し利用しようとしている者たちから、ロシア自身を守るためなのだ。
(中略)
(ウクライナ軍の軍人たちに呼びかけて)親愛なる同士の皆さん。あなたたちの父、祖父、曾祖父は、今のネオナチがウクライナで権力を掌握するためにナチと戦ったのではないし、私たち共通の祖国を守ったのでもない。あなた方が忠誠を誓ったのは、ウクライナ国民に対してであり、ウクライナを略奪し国民を虐げている反人民的な集団に対してではない。その(反人民的な集団)に従わないでください。直ちに武器を置き、家に帰るよう、あなた方に呼びかける。
(以下省略)
ここまで読んで、どう感じられたであろうか?(令和4年3月12日午後4時)
プーチンの言い分を検証するため先ずはウクライナの歴史への理解が必要と考えて調べてみたが、相当複雑であり日本のような周りを海に囲まれた海洋国家とは違い、四方を他国と陸続きで国境を接している大陸国家ならではの民族、宗教、文化などのせめぎ合いの歴史である。(令和4年3月31日午後24時)
2022年03月04日
独居老人の独り言 令和4年3月
posted by ひろちゃん at 16:36| Comment(0)
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